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アーティストたちへ [Others]

もう対岸の火事ではないのだろう。
60年代のヒッピーが掲げた「LOVE&PEACE」なんていう甘っちょろいスローガンなどなんの役にも立たない時代なのだろう。

それでも僕はロックンロールの力を信じる者である。

こんな話がある。恥ずかしい武勇伝語りと思わずに読んでもらいたい。
今から20数年前。少年はアルバイトで弁当の配達をしていた。真夏のある日、少年は海のリゾート・マンションへ配達に行った。10階の部屋のチャイムを押すと、出てきたのはヤクザのオッサンだった。少年とヤクザのオッサンはそこで小競り合いになった。理由は省略する。どうしようもない売り言葉に買い言葉の末、ヤクザのオッサンが言った。
「今すぐ若い衆が帰ってくるから、てめぇ、ここでちょっと待ってろ」
少年は虚勢を張った。
「若い衆じゃなくてよ~、てめぇはどうなんだよ!あっ!てめぇがこいよ!」
ヤクザのオッサン、その言葉にぶち切れて少年にとびかかった。頭突き3発。少年は一瞬で撃沈。廊下の壁に叩きつけられ、腹を殴られ、唇から血を流し、ぼろ雑巾のようにボコボコにされ立っているのがやっと。そのままシャツの襟首を捩じ上げられて廊下の窓際へ。古い建物だったせいで、窓枠が低く高層階なのに窓が開けられるようになっていた。そして、その時、運悪く窓が開いていた。開いている窓枠に首を絞められたような状態のまま持ち上げられ、少年はつま先立ち。少年は思った。あ~、落ちたら死ぬ。「アルバイト配達員10階から転落死」そんな新聞記事が思い浮かんだ。ヤクザのオッサンが怒鳴った。
「おい!謝れよ!落ちるか!おい!」
少年は苦しい息で振りしぼった。
「うるせぇ……」
次の瞬間、少年は床に崩れ落ちた。息が苦しかったが、助かった、と思った。
「オマエ、なかなかいい根性してるな」
少年に答える余裕はなかった。少しして呼吸が整いだしてから少年は立ちあがった。Tシャツはビリビリに破れていた。
「明日、ヨットに乗るんだけどよ、オマエ、遊びに来いよ。一緒に乗らねぇか?」
少年は小さな声で答えた。
「いや……明日もバイトあるし……」
ヤクザのオッサンが笑いながら言った。
「バイトなんか辞めちまっていいんだよ、なぁ、俺んとこ来いよ」
それを聞いて少年のココロは揺れた。バイトなんか辞めてしまいたい。こんなクサクサした日常から逃げ出したい。ヤクザのオッサンは「こんな配達なんかしてるよりよっぽど楽しいぞ」みたいなことを言っていた。けれど、少年には夢があった。少年は思った。
「俺はヤクザになんかなりたくない、俺はロック・スターになりたいんだ」
金がなくて困っている生活も、バイト先のハゲオヤジにこき使われるのも、サクセス・ストーリーの序章なのだと常日頃から思っていた。少年ははっきりと言った。
「やっぱり、いいです……。もう勘弁してください」
「そうかぁ、残念だな。まぁ1週間ぐらいここにいるからよぉ、ヨット乗ったりテニスしたりしてるからよ、いつでも遊びに来いよ」
ヤクザのオッサンはポケットから1万円札を出して「釣りはいらない」と言った。そして「悪かったな、にいちゃん、取っといてくれよ」と、さらにもう1枚1万円札を出した。
少年は少し戸惑いながら受け取って、ほんちょっと会釈をしてその場をあとにした。
その後、少年はリゾート・マンションには行かなかったし、残念だけれど思い描いていたサクセス・ストーリーが始まることはなかった。

さて、この話の「ヤクザのオッサン」を「テロリスト」に置き換えてみたらどうだろう?

それから、少年がなんの夢も希望も持っていなかったと考えてみたらどうだろう?もしかしたら、少年はヤクザになっていたかもしれない。
しかし、幸いなことに、少年にはロックンロールがあった。ジョンやジョーやボノに育てられた思想があった。だからオッサンの誘いに乗らなかった。

日本の大学生がISILへの出国を企んでいたという事件があった。詳しくは知らない。
けれど、その大学生に、あるいは、ISILの戦闘員に志願する世界中の若者に、1本のギターがあったならとロックンロール信者の僕は思う。

小さな小さな、名も無きすべてのアーティストたちへ。
発信し続けろ。
詩を書く奴は詩を、物語を書く奴は物語を、絵を描く奴は絵を、音楽をやる奴は音楽を。
サクセスは出来なくても、もしかしたら、その言葉が、色彩が、旋律が、世界中のテロリストになろうとする若者を思いとどまらせることになるかもしれない。
バカにされたっていいじゃないか。笑われたっていいじゃないか。どうせ名も無きアーティストなんて、どう転んだって恥ずかしい存在じゃないか。

だから僕は、激しい怒りを持って、ネックが折れんばかりにFのコードを握りしめようと思う。
絶対に許さない、そんな覚悟で平和のうたを歌ってやろうと思う。

アイツらが見せるのが「悪夢」なら、僕たちは「夢」を見せてやろう。

俺たちは「武器」を持っている。

FUCK THE TERROR
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