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フィロソフィー [My Life]

NHKで放送されてた「最後の講義 大林宣彦」って番組を録画しておいたのを観た。
大林監督、特別好きな映画っていうのはないのだけど、学生の頃流行った「尾道3部作」はテレビの放送かなんかで(映画館にも行ったものもある気がする)当然観たし、その後の「ふたり」は連れが好きで最初はビデオで、わりと近年になってDVD買って再び観た。「ふたり」は名作だと思う。他にも何か観たかなぁ。観ていると思うけど。

番組表見てて、タイトルだけ見て、なんとなく録画予約しておいた。それで先日、なんとなく見始めたのだけど、これがほんとに面白かった。大林監督かっけ~。最後はちょっと泣いた。

番組コンセプトは今日が人生の最後なら何を伝えるか。余命3カ月の宣告を受け、それから1年4カ月目(収録時)を過ごしているという大林監督が早稲田大学で行った講義。
もちろん映画監督だから、映画についての話が主だったけれど、映画を作る人だけでなく、すべての表現者にとって大切なことばかりだったと思う。
深く共感する言葉が多かった。そして作家としての自分(俺の場合は曲)を見なおすことが出来た。

少し書き残しておこう。

まずは表現の核となる部分。「メイク・フィロソフィー(哲学・哲理)」。自分がこういうことを考えているが故に作るんだということ。表現はまずフィロソフィーありき。
俺の作るメロディにフィロソフィーはあるか。無いねぇ。ただし、歌詞(言葉)にはフィロソフィーしかありませんよ。メロディは言葉を乗せる乗り物だから、そういった意味ではフィロソフィーありと言ってもいいか。

「表現する人はゆるキャラだけにはなるな」。ん~、最近ゆるキャラになりつつあるか?え~?そんなことないか?

「表現者はプラカードを担がない」「プラカードを担がないと覚悟したものが表現者になる」。
これねぇ、ほんと、そうだよなって思ったんだよね。プラカードとは正義だから。後半に出てきた「100年後の未来にまで伝える表現」ってことにもつながることだと思うのだけど、俺はどうもプラカードとかシュプレヒコールというのが苦手。苦手というか、俺の表現とは違うなぁと。昔はそういう部分持っていたのだけど。今はほとんどない。

大林監督は自分の映画のことを「シネマ・ゲルニカ」と呼んでいた。ゲルニカとはピカソの絵「ゲルニカ」。ピカソが、爆撃された故郷ゲルニカことを描いた絵。この絵がもし写真のように戦争を描いた絵だったとしたら、もう見たくない、忘れたい、とすぐに風化してしまう。しかし、ピカソの、横顔に目がふたつ書いてある芸術作品だからこそ、今でも人々はその絵を見て、戦争なんてよくないなってことを子供にまで伝えることが出来るんだということ。「ジャーナリズムはすぐに忘れさられる」。

ほんとにそう思うんだよねぇ。歌詞を書く時に。たとえば直接的な言葉で、今の社会批判みたいなことそのものズバリを言ってみても、刺激的なのはその一瞬だけだと思うんだよね。それより、もっと人間、生物にとって普遍的な、たとえばラヴソングとかの方が、刺激的ではないかもしれないけど息の長い作品になる。
そう思って、震災を歌った「海岸線に陽は昇る」を書いたし。去年は世界中のテロのニュースとか日本の政治的対立とかを見てて「希望の国」を書いた。「希望の国」と言いつつ絶望しかないっていう。これっぽっちも明るくないっていう。
でもねぇ、これ、珍しく歌詞が先に出来たから、たまには違う人に曲付けてもらおうかと思って(最終的には結局自分で曲にしたんだけど)知り合いの女の子に歌詞をメールしたの。そしたら、西野カナみたいって返信がきて。西野カナがどんなもんかまるで知らんし興味もないけど、ぱっと見ただけだったらそういう感じなのかなぁと。だったら正解だなぁと確信した訳。
美しい大さん橋の景色を見てるふたりが「この目に映ることだけがすべて」と言いながら、この目に映ることだけがすべてではないと言ってるようなもんだから。行間にあるのは世界中の悲惨な事件やこの国の閉塞感だからね。
まぁ、ちょっと手前味噌な話でした。ちゃんとフィロソフィーあるな。コーラス部分の韻にも注目してよね~。

話がそれましたが、最後に「表現はリアクション」ということ。アクションではない。これは、はっとした。
たとえば、空がきれいだからにっこりしよう、緑がきれいだから優しい絵を書こう、とか。すべて、反応していることなんだ。そして「リアクションから新しいフィロソフィーが生まれる」。
確かにそうだ。ロックに限らず、アートにかかわることをしていると、何かアクションを起こさないとみたいな、そういう部分あると思うけど、違うんだ。リアクションでいいんだ。そこに生まれたフィロソフィーありきで作品を作っていけば、それは未来に伝わる表現になり得るかもしれない。
こんなことも言っていた。「戦争という狂気に人間として対峙できる力は正気しかない。だから正気で生きる」「正気とは地球上の万物の本能と考えればよい」と。そうだね、正気でリアクションしていこう。

この録画、保存しておこう。表現者として忘れちゃいけないことがたくさんあるような気がする。この講義の完全版って放送してくれないかなぁ。
少し自信になった。ちゃんとしたもの作れてるなって思った。刺激にもなった。さっそく新曲作り始めた。いや、まぁ作品に自信はあるんですよ。じゃなかったら、この音程で自ら歌なんか歌わないっちゅーの。あとは音程が合えばいいのだけどね、俺の場合……。


「希望の国」

夜がまた終末に近づいてくけど
知らないふりしてふたりは歩く
テレビやウェブサイトで目にするニュースが
全部ウソならよかったのに

こんなに絶望溢れてるから
こんなに君を愛せるのかな

それにしても今夜 星が綺麗だ
11月の風は透き通って
ベイエリアの夜 大さん橋の上
この目に映ることだけがすべて

先の見えないふたりだから
こんなに君を愛せるのかな
これが最後の夜だとしたら
もっと君を愛せるのかな

Harbor Light Starry Night Innocent Sky
はり裂けてく未来
Harbor Light Starry Night Innocent Sky
他に誰もいない
Harbor Light Starry Night Innocent Sky
崩れてゆく世界
Harbor Light Starry Night Innocent Sky
ふたりの世界
この目に映ることだけがすべて

こんなに絶望溢れてるから
こんなに君を愛せるのかな
先の見えないふたりだから
こんなに君を愛せるのかな

もしもここが希望の国でも
こんなに君を愛せるのかな
みんな笑ってる希望の国なら
もっと君を愛せるのかな

希望の国なら
もっと君を愛せるのかな
もしここが希望の国なら
ずっと君を愛せるのにな

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